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【連続コラム】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~⑨カナダのペレット工場の実情

SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar
SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar

本コラムは、バイオマス燃料の認証制度を批判的に検証したレポート『持続可能なバイオマスプログラム:持続不可能なものを認証する』「パート2 SBPの実情:カナダのドラックス社ペレット工場」からの抜粋・転載したものです。

【この記事の内容】

ペレット工場は他の認証を利用して丸太を調達する

SBPのリスク評価はFSCよりも緩い

SBPの軽減措置はFSCよりも緩い

英国を拠点とするエネルギー会社であるドラックス社は、2021年にピナクル・リニューアブル・エナジー社を買収し、カナダで最大の木質ペレット生産業者となった。BC州とアルバータ州で12工場を操業し、そのすべてがSBP認証を取得している(図9)[1]。

本分析は、ドラックス社の工場について入手可能な9つのSBP公開概要報告書を基にしている。これらの文書から、各工場の原料構成や、特定されたリスク、そして各現場で適用されている軽減措置について理解を深めることができる。

図9. ドラックス社はカナダのBC州とアルバータ州の各地で木質ペレット工場を操業する


画像:Google Earth

2.1.1ペレット工場は他の認証を利用して丸太を調達する

SBP公開概要報告書によると、ドラックス社のほとんどのペレット工場が主におがくずやかんなくずといった製材等残材を調達しており、これらは「二次原料」に分類されるものである。

例えばアームストロング工場(BC州)は、原料はすべて製材工場と合板工場の残材だと報告し、ペレット用に丸太を伐採していないことを暗に示している。前述の残材は、公有林から切り出された丸太を加工する大規模な製材工場で発生するものが多く、カナダ規格協会(CSA)またはSFI(いずれもPEFCに認定されている)の認証を取得済みの場合もあれば、まったく認証を受けていない場合もある。

サプライヤーがFSCまたはPEFCのCoC認証を取得していれば、SBPはその原料をSBP管理原料で低リスクであると見なし、たとえ元の森に老齢林やその他の原生林が含まれていても追加的な軽減措置を義務づけない。

いくつかの工場では、直接森林から得られる林地残材や丸太などの「一次原料」も調達している。ドラックス社のデータによると、原料の約10%が丸太、8%が林地残材であり、81%が製材等残材に由来する[2]。

しかし、こうした分類はあいまいになり得る。なぜなら、「林地残材」とされるものの中に丸太が隠されている可能性があるからだ。例えばスミザーズ工場(BC州)では、一次原料を年間約6万絶乾トン消費していた(約13万7500m³の木材)。メドウバンクやバーンズ・レイク(いずれもBC州)などの他の工場も、主に広葉樹(例えばヤマナラカシ)の丸太や針葉樹のこずえの部分といった一次原料を大量に受け入れたと報告している。

非認証の一次原料を調達する場合、ペレット工場にはサプライベース評価(SBE)の実施が義務づけられる。一般的にこうした評価は、BC州ではSBPの地域リスク評価(RRA)、アルバータ州では企業内で行う評価に依存し、そのいずれもがFSC管理木材のナショナルリスクアセスメント(NRA)に大きく依存している。

これらのツールでは、老齢林やシンリントナカイ生息地での伐採や、未解決のままになっている先住民の土地に関する権利の申し立てなどの「特定リスク」を明らかにする。その上で工場は、明らかになった個々のリスクについて軽減措置を示さなければならない。BC州でよく指摘されるのは、シンリントナカイ生息地、原生林景観(IFL)、そして文化的に重要な先住民族の場所(HCV2、HCV5/6)などの問題である。

工場のSBP報告書には、既存の認証に基づく軽減措置が記されている場合が多い。例えばプリンストン工場(BC州)は、毎年PEFC(SFI/CSA)認証木材の割合を調べ、その割合が高いほどリスク軽減措置として効果的であるとみなすと記している。

実際に多くの工場では、サプライヤーが認証木材の割合を高く維持していれば(95~100%)、原料は低リスクだと見なしている。工場が追加的なマッピングや軽減措置を実施するのは、サプライヤーが認証を喪失した場合のみである。

このことは、SBPが持続可能性を保証するために、独立した現場レベルでのリスク管理を実施するのではなく、PEFCやその他の制度に大きく依存していることを示す。ドラックス社の工場のSBP報告書に関する詳細な分析結果を付録Fに掲載した。


SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar

2.1.2 SBPのリスク評価はFSCよりも緩い

SBPとFSCカナダでは、特に軽減措置を必要とする特定リスク地域を見極めるにあたり、明確に異なるリスク評価手法を用いている。

FSCカナダのナショナルリスクアセスメント(NRA)は、不完全ではあるものの、保全科学に紐づいた空間的閾値を用いた予防的手法を適用する。例えば、ある森林管理単位(FMU)内の原生林景観(IFL)の50%超が攪乱されている場合、その地域は特定リスク地域として分類される。この手法は、特にIFLや原生林、シンリントナカイ生息地などの高い保護価値(HCV)が関連している場合に、定量可能な生態学的指標によって軽減措置が実施されるよう保証している[3]。

対照的にSBPのサプライベース評価(SBE)や地域リスク評価(RRA)は、所有権に基づく、より一般化された手法を採用している。BC州において、SBPのRRAは、生態学的閾値や具体的な生息地の状況ではなく、FSC認証を取得していない公有地、非認証の私有地といった土地区分に基づいて特定リスクを分類する。

科学的に導き出されたリスク要因を適用する代わりに、SBPは生産者が独自の軽減戦略を策定することを認めており、その戦略を第三者監査機関が確認する仕組みとなっている[4]。

このようにSBPが一貫性のある生態学的予防措置を講じることなく、生産者と監査機関に柔軟に権限を移譲しすぎている点について、環境専門家は懸念を示している。

FSCのNRAは軽減措置に関する詳細な指針を提供することを目的としており、措置の実施は検証可能で効果的であり、リスクレベルに見合うものでなければならないと強調している。

それに対して、SBPは生態学的な成果よりも手続き上の妥当性を強調する。FSCの制度には地域別の付属書類や軽減措置の優良事例が含まれるが、SBPにはそれと同等の自然景観に関する要件はなく、累積的影響に関する考慮もない。

SBPの制度では、ただステークホルダー・エンゲージメントや教育的普及活動などの軽減活動を記録すれば、それが現地での環境保護に代わるものとして認められうる。

このように、厳密ではないRRAに依存し、個々の生産者による非介入型の軽減措置を認めることにより、見かけ上は持続可能性が認証されていても森林劣化が継続しうる状態が作り出されるのである。

2.1.3 SBPの軽減措置はFSCよりも緩い

SBPは、特定リスクを明らかにして軽減措置を講じることをバイオマス生産者に義務づけているが、公開された監査報告書を精査すると、共通のパターンがあることが分かる。

多くの場合、軽減措置は最低限で手続き上のものであり、実際の生態学的脅威に対処するには不十分なのだ。

SBPの制度は、劣化が明らかな地域であっても、緩い対応や間接的な対応を容認する。この点は、より生態学に根差した手法を用いるFSCカナダのナショナルリスクアセスメント(NRA)と比較した場合に、特に問題である。(中略)

老齢林管理地域

老齢林管理地域から調達を行うペレット生産者は通常、法令遵守、マッピング、境界の確認に頼っており、規制の上で求められる最低限のことしかしていない。企業が自主的に老齢林を除外していたり、より確かな保全策を講じている事実は確認できなかった[5]。

アームストロング工場とラビントン工場(BC州)の周辺には温帯多雨林、スミザーズ工場(BC州)の周辺には内陸トウヒ林というように、ドラックス社の多くの工場が老齢林の広がる地域で操業していることを考えれば、これは憂慮すべき点である。

SBPの監査では、保護区域外での老齢林からの調達を低リスクと評価する場合が多い。その根拠として、州の伐採保留制度や生態学的に影響を受けやすい林分を避ける企業の方針を挙げていた。

しかし英国会計検査院(NAO)などの調査から、木質ペレットは古い原生林で製材用材木を伐採した後に出る残材から製造される場合があることが明らかになっている[6]。

SBPは、これを規格の不遵守として指摘せず、その調達が合法的であり当該企業が老齢林を特定するプロセスを備えている限り、このような調達を容認している。ある例では、伐採は老齢林管理戦略の下で許可されていると言及する監査報告書もあったが、こうした施策は不適切だと多くの生態学者が批判している[7]。

原生林景観(IFL)

SBPは、当該区域が正式な保護区域ではなく、明らかに違法でなければ、IFL内の伐採地や断片化した区域からの調達を認めている。空間的閾値や保全価値に基づいてIFLからの調達を禁止または条件つきで制限する可能性のあるFSCとは異なり、SBPはIFLの境界線の認識とそのマッピングしか求めない。

文書の作成以外に具体的な軽減措置は求めないため、かつて広大だったIFLの残りを脅かし、自然景観レベルの保全目標を損なっている。

シンリントナカイ生息地

SBPの監査報告書は、ペレットの調達区域とシンリントナカイの生息地が重なっている事実を認めている。軽減措置としては、有蹄類の冬季生息地の指定や伐採区における地衣類の維持など、既存の州伐採計画の遵守などが一般的である。

しかし、特にシンリントナカイの個体数が減少し続けていることから、保全生物学の専門家の間ではこうした方策は不十分だとみなされている。

高リスク地域からの調達を回避するための速やかな操業変更について言及する監査報告書はほとんどない。

企業が長期的または間接的な軽減措置について言及している例もある。例えば景観計画策定への参加や研究支援などであるが、これらは抱負のようなものであり、実行可能性に欠ける。

シンリントナカイ生息地が直面する脅威は十分に立証されているが、この脅威に対しSBPの対応が不十分であることは、SBPが生態学的な成果よりも手続きの遵守を重視する点からも明らかである。

[1]SBP. (n.d.). Certificate holders. https://sbp-cert.org/certifications/certificate-holders/
[2] Drax. (2025). Annual report and account 2024. https://www.drax.com/investors/annual-report/
[3]FSC. (2020). FSC-NRA-CA FSC National Risk Assessment for Canada Controlled Wood Risk Assessment (CW) V(2-1). https://connect.fsc.org/document-centre/documents/resource/344
[4]SBP. (2021). SBP-endorsed Regional Risk Assessment for the Province of British Columbia, Canada. https://sbp-cert.org/wp-content/uploads/2021/08/SBP-endorsed-RRA-for-BC-Aug21-FINAL.pdf
[5]Hervieux, D., et al. (2014). Managing wolves (Canis lupus) to recover threatened woodland caribou (Rangifer tarandus caribou) in Alberta. Canadian Journal of Zoology, 92(12). https://doi.org/10.1139/cjz-2014-0142
[6]NAO. (2024). The government’s support for biomass. https://www.nao.org.uk/reports/the-governments-support-for-biomass/
[7]Stand.earth. (n.d.). Forest eye. https://stand.earth/forest-eye/

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