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【連続コラム】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~⑤SBP認証を受けたペレット工場の炭素排出量評価の実態

SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar
SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar

本コラムは、バイオマス燃料の認証制度を批判的に検証したレポート『持続可能なバイオマスプログラム:持続不可能なものを認証する』「2.2炭素排出量の分析」からの転載です。

【この記事の内容】

無視される「炭素負債」と「炭素回収期間」

燃焼や土壌炭素の喪失によるCO2排出を考慮していない

「2.2炭素排出量の分析」より

国際的な炭素会計ルールに従い、カナダはバイオマスエネルギーからの排出量をエネルギーセクターではなく土地利用セクターに計上している。SBPの炭素排出に関する原則3も同じように、国別の会計の枠組みに従っている。

実際には、SBPにおける遵守は通常、カナダが国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に提出した森林炭素貯蔵量の報告と、管理林の炭素レベルが安定または増加しているという政府の公式見解を引用することで、示される[1]。

しかし、こうしたハイレベルの報告では、場所別の炭素回収期間(カーボンペイバックタイム)の分析が省略されており、具体的に使用された原料が排出量に実際にどのような影響を及ぼすかが検討されていない。これはバイオマスの持続可能性に関して最も重要な側面の一つである(図10)。

図10. 化石燃料をバイオマスで置き換えた場合、炭素回収期間は数十年から100年以上続く可能性がある


出典:Laganiere, et al., 2017.[2] 熱供給・発電用のさまざまな化石燃料をさまざまなバイオエネルギー原料で置き換えるシナリオで、炭素負債(黒)、不確実性(黄色)、炭素便益(緑)の各段階の長さを表す。アスタリスク(*)は、反事実シナリオで林地残材が伐採場所に残されて分解するのではなく、道路脇で焼却される場合を示す。

調査したSBPの監査報告書はいずれも、原料に関連する炭素負債や炭素回収期間の評価をまったく含んでいなかった。

むしろ一部の監査では、原料の大部分(例えばあるケースでは95%)が製材等残材から成り、これは他の産業の二次的な副産物であると述べて、カーボンニュートラルを正当化していた。その一例としてアームストロング工場(BC州)は、その木質繊維の使用量が州で決められた年間許容伐採量の1%に満たないと算出し、景観規模での炭素の影響は無視してよいと結論付けた。

このような議論はマクロレベルでは成り立つかもしれないが、重要な反事実を見落としている。

バイオマスの中でも特に価値の低い木材やアメリカヤマナラシのような種は、もしバイオマスに利用されていなければ森林に残り、長い時間をかけてゆっくりと分解していた可能性がある。ペレットの需要がなければ、まったく収穫されていなかったかもしれない。メドウバンクやバーンズレイク(BC州)のようなケースでは、製材所で通常受け入れられないような広葉樹の丸太が使用されていたことが監査でわかっている。

つまり、以前であれば林地に残されていたかもしれないような丸太である。この木材をペレット生産に使うことで、これらの木に蓄積されていた炭素が今や燃焼によって直ちに放出され、本来なら数十年かけて起きていた排出が加速することになる。

SBPの炭素原則は、この排出のタイミングの問題に対処せず、この転換を有益なものとして扱っているように見える。つまり、林地残材の焼却の削減に注目する一方、これまで利用されていなかったバイオマスをエネルギー利用することによる長期的な気候への影響を無視している。

施業が法定の伐採上限に留まり、再植林が行われる限り、SBPは森林の炭素貯蔵量が安定しているとみなす。しかし、この仮定は、特にBC州で独立機関による科学研究によって異議を唱えられており、伐採強度の増加と老齢林の喪失によって長期的な炭素蓄積能力が低下することが示されている[3]。

2.2.1 木を燃やせば山火事と同じようにCO2が排出される

最近の科学的推計によると、伐採によって年に35億〜42億トンのCO2が排出されており、これは現在の世界全体の排出量の約10%に相当する。カナダでは管理林の炭素排出量と除去量が国家インベントリ報告書(NIR)で報告されているが、近年は主に山火事の激化や在来の昆虫種の大発生により、管理林が炭素の純吸収源から純排出源に変化している。

このような動向にもかかわらず、カナダの炭素会計の枠組みは、林業で排出される炭素の影響の完全な把握や透明性のある報告を行っていない[4]。

環境保全団体ネイチャー・カナダの調査をはじめとする複数の分析では、伐採を行うと、林地残材の分解と土壌撹乱の両方でかなりの排出が発生することが強調されている。森林は伐採されてから何年にもわたって炭素を排出し続ける可能性があり、炭素の吸収源から排出源への転換がさらに加速される[5]。

このことは木質ペレットを生産する場合に特にあてはまる。木が伐採されて、エネルギー利用のために燃やされれば炭素が直ちに排出されるとともに、土壌に残っている炭素も時間をかけて排出され続けるのである。

実際には、この燃焼時の炭素の放出は山火事で即座に炭素が排出されるのと同様であり、ペレット燃料が本質的に「クリーン」または「カーボンニュートラル」だという主張を根底から揺るがす(図11)。

図11. バイオマスを燃焼すると単位電力あたりのCO2排出量が化石燃料より多い


出典:Song, 2025.[6]

カナダのNIRでは土地利用セクターにこの排出量の一部が含まれており、エネルギーセクターの政策では無視されることが多い。英国、日本、韓国などの輸入国が消費する時点でペレットの燃焼をカーボンニュートラルとして扱うため、これはより深刻な問題となる。

実際には、排出は単に国外で起きるが、計上はカナダのインベントリになされる。BC州では、ますます深刻化する山火事ですでに何億トンものCO2が排出されているのに加え、木質ペレット輸出のための老齢林の伐採と転換によって州の炭素収支の赤字がさらに悪化している。

2.2.2 SBPは森林管理の排出量を否定している

木材を1立方メートル伐採するごとに、将来の炭素隔離の喪失と森林バイオマスの劣化により、正味の炭素排出が生じる。カナダのNIRから導いた推計によると、伐採活動は、主に炭素吸収の減少と分解作用により、国全体で年に約2600万トンのCO2排出をもたらしている。

これはパルプ・紙、木材産業の操業による直接的な排出量を上回っており、森林伐採自体が大きな排出源でありながら十分に認識されていないことを示している[7]。

これより規模が小さいとはいえ木質ペレットの生産も年に何十万トンものCO2を排出しており、もし伐採された木が森林に残っていればこのCO2排出量は生じていなかったはずだ。このようなカーボンフットプリントはカナダの山火事による排出量と比較すれば控えめに見えるかもしれないが、特に気候変動対策として重要な時間枠の中で気候中立を実現するにはほど遠い。

しかし、SBPの枠組みはこの現実に対応していない。総排出量や炭素の排出・再吸収のタイミングを考慮することなく、「持続可能」な森林管理体制の下で収穫されたバイオマスは本質的にカーボンニュートラルだと想定しているのである。

さらにSBPの監査ではいつも、炭素貯蔵量が回復する十分な証拠として公有地における再植林の法的義務を挙げている。この要件は重要ではあるが、実際にカーボンニュートラルであることを示すには不十分である。

再生林は通常、特に短いローテーションで管理されている場合、林齢が高い林分より炭素貯蔵量が格段に少ない[8]。その結果、炭素量の多い古い森林から、集約的に管理された若齢の森林に転換すると、たとえ技術的には森林のまま維持され土地利用変化の扱いを免れたとしても、その森林では長期的な炭素収支の赤字が生じる。SBPには、このような「集約化による炭素貯蔵量減少」への制限がない。

さらにSBPは土壌炭素の損失による排出量を考慮しておらず、これは森林の炭素会計における大きな盲点である。

伐採活動は森林の土壌を撹乱し、土壌中の有機炭素の酸化を加速させる。カナダ森林局の炭素モデルは時の経過とともに一部回復すると予測しているが、BC州内陸部での野外測定では、特に短い伐採ローテーションの場合、土壌炭素損失がはるかに急激かつ長期にわたることが示されている。炭素貯蔵量が多い泥炭地や湿地の撹乱は特に多くの排出量をもたらす点については、SBPの監査の概要では全く触れられていない[9]。

これらの抜け穴により、調達される木質ペレットの本当の排出プロファイル(排出源ごとの排出量の内訳)が隠蔽され、気候に重点を置いた認証としてのSBPの信頼性を損ねている。

[1]State of The Forests. (2024). The state of the forest in Canada: Seeing through the spin. https://www.stateoftheforest.ca
[2]Laganière, J., et al. (2017). Range and uncertainties in estimating delays in greenhouse gas mitigation potential of forest bioenergy sourced from Canadian forests. GCB-Bioenergy, 9(2). https://doi.org/10.1111/gcbb.12327
[3]Booth, M. S. (2018). Not carbon neutral: Assessing the net emissions impact of residue-based bioenergy. Environmental Research Letters, 13(3). https://doi.org/10.1088/1748-9326/aaac88
[4]State of The Forests. (2024). The state of the forest in Canada: Seeing through the spin. https://www.stateoftheforest.ca
[5]Saxifrage, B. (2023, August 8). Managed to death: How Canada turned its forests into a carbon bomb. Bulletin of the Atomic Scientists. https://thebulletin.org/2023/08/managed-to-death-how-canada-turned-its-forests-into-a-carbon-bomb/
[6]Song, H. (2025). South Korea to reduce subsidies for biomass energy, explained. SFOC. https://forourclimate.org/research/558
[7]Saxifrage, B. (2023, August 8). Managed to death: How Canada turned its forests into a carbon bomb. Bulletin of the Atomic Scientists. https://thebulletin.org/2023/08/managed-to-death-how-canada-turned-its-forests-into-a-carbon-bomb/
[8]Waring, B., et al. (2020). Forests and decarbonization – Roles of natural and planted forests. Frontiers in Forests and Global Change, 3. https://doi.org/10.3389/ffgc.2020.00058
[9]James, J., & Harrison, R. (2016). The effect of harvest on forest soil carbon: A meta-analysis. Forests, 7(12). https://doi.org/10.3390/f7120308

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