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【連続コラム④】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~欠陥のある炭素会計

SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar
SBP認証取得済みのドラックス社ペレット工場に山積みされた丸太(カナダBC州) © Len Vanderstar

本コラムは、バイオマス燃料の認証制度を批判的に検証したレポート『持続可能なバイオマスプログラム:持続不可能なものを認証する』「1.3.3. SBP基準1は環境や社会の持続可能性を保証できていない」「1.4.3. SBPは炭素排出を容認している」からの転載です。

SBPの気候影響に関する主張は、欠陥のある炭素会計に基づいている。同制度では、木材燃焼による排出は数十年にわたる森林の再生によって相殺されると想定しており、パリ協定の目標達成に向けて2030年までに必要な緊急の排出削減を無視している。SBPは炭素収支がマイナスとなる地域からの調達を認め、現地データではなく国家平均を使用することで、企業が炭素貯蔵量の多い森林の喪失を炭素の蓄積密度の低い地域での再生によって相殺することを可能にしている。

SBPはバイオマス燃焼時の排出に対する軽減措置要件を設けず、その責任をエネルギー規制当局に委ねている。また、バイオマスは化石燃料よりもエネルギー単位あたりのCO2排出量が多いという事実を無視し、事業者が「カーボンニュートラル」を主張できるようにしている。現行の炭素会計手法では、これらの排出を土地利用セクターにまで遡って追跡することができず、エネルギーセクターはバイオマス利用に伴う気候緩和コストの負担を回避している。(『持続可能なバイオマスプログラム:持続不可能なものを認証する』「エグゼクティブ・サマリー」より)

【この記事の内容】

覆い隠される「伐採による排出」

バイオマスの燃焼時のCO2排出をゼロと扱っている

「1.3.3. SBP基準1は環境や社会の持続可能性を保証できていない」より

「SBP原則3:原料は、森林の炭素貯蔵量が長期的に安定しているか増加しているサプライベースからのみ調達される」

(SBP「基準1:原料の適合性」の内の)この原則は、SBPを既存の森林認証制度と差別化するはずのものである。理論上は、バイオマスに特化した気候重視の重要な基準を導入している。

しかし、原則3の構造と内容はその趣旨に見合っていない。他のSBP原則とは異なり、原則3では3つの広範な適合経路を示しているが、それらは現地の評価ではなく、主に国レベルの炭素貯蔵量の報告に基づいている。そのため、森林単位はおろかサプライベース単位においてすら、炭素貯蔵量に対する十分な影響の測定を求めていない。

こうした代わりの指標の使用により、森林単位での劣化や排出を国全体の平均値がどの程度的確に反映できているのかという懸念が生じる。この問題については、本報告書のパート2でさらに詳しく分析している。

原則3は、炭素貯蔵量および炭素隔離能力が長期的に安定または増加することを求めているが、山火事や在来の昆虫による攪乱など「自然プロセス」による損失については例外を認めている。

これらの自然現象は気候変動とともに激化しており、多くの場合SBPが容認する持続不可能な森林管理によって増幅されている。例えば、原生林が伐採された林に転換されると、道路網の拡大やエッジ効果によって、炭素貯蔵量は減少し、生息・生育域は分断され、火災リスクが高まる(図5)[1]。さらに、SBPは最近火災にあった原生林で、いわゆる「サルベージ伐採」を認めている。これは炭素蓄積の回復をさらに遅らせ、生態系の攪乱を悪化させる[2]。

またSBPは、サプライベースにおける長寿命木材製品の需要を評価するよう工場に求めている。しかしこれは検証が困難で、操作されやすい曖昧な要件である。ペレット工場は自らの操業を正当化することに利害関係を有しているため、この点で本質的な利益相反が生じる。

図5. 原生林とは人間活動による攪乱を受けていない森林である

「1.4.3. SBPは炭素排出を容認している」より

SBPの最も問題のある特徴の一つは、森林炭素会計の扱い方である。FSCやPEFCは炭素排出の追跡を目的として設計されていないが、バイオマスに特化した認証制度であるSBPには炭素に関する原則(原則3)がある。

理論上この原則は、認証バイオマスが森林の炭素貯蔵量が安定しているか増加している地域から調達されていることを保証し、カーボンニュートラルであるという主張の中核をなす前提となっている。

しかし実際には、SBPは国レベルの炭素データに専ら拠っており、ある法域の森林炭素総量が安定していると示される場合、個別地点で老齢林の皆伐などにより深刻な炭素損失が生じていても、その法域内のすべての調達が持続可能であるとみなす。

地域の平均値に頼ることで局所的な排出ホットスポットが隠蔽され、気候変動対策との適合性があるかのような印象を、実際には存在しないにもかかわらず与えている(図7)。

図7. 書類上では森林の炭素貯蔵量全体の変化しか示されず、伐採による排出は覆い隠されている


出典:Environmental Paper Network、2023年[3]

SBPはまた、山火事や昆虫による攪乱といったいわゆる自然プロセスによる炭素貯蔵量の損失について例外を認めているが、これらの現象はいずれも気候変動により発生頻度が増している。

さらにSBPは、サルベージ伐採(森林火災後の樹木伐採)も容認している。これは原生林において特に有害である。なぜなら、原生林では豊かな生物多様性と複雑な樹冠構造により、多くの立木が長年にわたり保持されているからである。

しかしSBPは、火災にあった森林であっても残留炭素を貯蔵し続けている点や、この有機物を取り除けば生態系の再生を著しく遅らせ、場合によっては永続的に損なう可能性がある点を見落としている。多くの場合、これらの森林が回復し発生した炭素負債を返済するには数十年を要し、場合によっては回復すらしないこともある。

さらに悪いことに、SBPはバイオマス燃焼に伴う排出量の算定を義務づけておらず、その責任を輸入国のエネルギー規制当局に委ねている。これにより、バイオマスの燃焼時のCO₂排出をゼロとみなすという広範な政策上の誤りを助長し、気候に対する責任を土地利用部門に押し付ける結果となっている(図8)。

しかし、木を燃料として燃やせばCO2は即座に放出されるのに対し、森林の再生は数十年から数世紀を要し、特に気候変動によるストレスが増大する中では再生すらしない場合もある[4]。とりわけ原生林は、人工林よりもはるかに回復力があり、炭素も豊富に蓄積しており、原生林の保護は生物多様性と気候の双方にとって極めて重要な便益をもたらす[5]。

図8. 国際的な炭素会計ルールでは、エネルギー部門におけるバイオマス燃焼による排出量を算入していない

炭素に関するSBPの不十分な保護措置は、この排出と吸収の時間差を解消するどころか、むしろ悪化させている。

FSC認証林は、より厳格な管理によって炭素貯蔵の面でより良好な結果を示す可能性があるが、FSCですらバイオマスがカーボンニュートラルであるとは主張していない。決定的な違いは、SBPは「炭素」の問題に取り組んでいると主張しながら、その対応が極めて不十分であるため、政策決定者に誤った確信を与えてしまっている点である。

[1]Wood, P. (2021). Intact forests, safe communities. Sierra Club BC. https://sierraclub.bc.ca/intact-forests-safe-communities-sierra-club-bc-report/; State of The Forests. (2024). The state of the forest in Canada: Seeing through the spin. https://www.stateoftheforest.ca
[2]State of The Forests. (2024). The state of the forest in Canada: Seeing through the spin. https://www.stateoftheforest.ca
[3]EPN. (2023). How UNFCCC carbon accounting has created a biomass delusion and is contributing to climate change and global inequity. BAN. https://environmentalpaper.org/2023/11/how-unfccc-carbon-accounting-has-created-a-biomass-delusion-and-is-contributing-to-climate-change-and-global-inequity/
[4]Brack, D. (2019). Background analytical study. Forests and climate change. UN Forum on Forests. https://www.un.org/esa/forests/wp-content/uploads/2019/03/UNFF14-BkgdStudy-SDG13-March2019.pdf
[5]Thompson, I., et al. (2009). Forest resilience, biodiversity, and climate change. A synthesis of the biodiversity/resilience/stability relationship in forest ecosystems. SCBD. https://www.cbd.int/doc/publications/cbd-ts-43-en.pdf

【連続コラム】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~①
【連続コラム】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~②SBPはペレット工場や販売会社を認証する制度である
【連続コラム】輸入木質ペレットの持続可能性は認証で確認できるのか?~③SBPは最低限のリスク評価しか行われていないものを、「持続可能」としている