燃焼時のCO2排出量が石炭よりも多い
日本の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)では、「バイオマスの燃焼によるCO2排出はゼロ」と見なされています。「燃焼時に排出されるCO2は、森林が再成長する過程で吸収される」「過去に森林が吸収した分を燃焼しても、大気中のCO2は増えない」という認識が前提となっていますが、燃焼時にCO2を排出することに変わりはありません。
木質バイオマスは化石燃料と比較して水分を多く含み、エネルギー密度(単位体積または単位重量当たりのエネルギー量)が低いため、燃焼時に石炭よりも多くのCO2を排出します。(単位エネルギー当たり)
また、発電所でのCO2排出量の計測には「発電効率(生じたエネルギーのうち電気になる割合)」の考慮が必要です。
木質バイオマス発電の発電効率は一般的に20~30%です。残りのエネルギーは熱となり、冷却器を使って排熱として捨てられています。
産業技術総合研究所の歌川学主任研究員の研究では、木質バイオマス発電(発電効率25%)の燃焼による電力量当たりCO2排出量は、石炭火力発電(同38%)の約1.8倍、コンバインドサイクルLNG火力(同53%)の約4.5倍にも上ります。つまり、木質バイオマスは石炭火力やLNG火力より「発電効率が悪く」、「CO2排出量が多い」のです。
燃料として伐採される森林が元の状態に成長するには長い年月が必要です。森林は幹や枝葉などの地上部だけではなく、土壌中にも大量の炭素を蓄積しており、その回復にはさらに膨大な時間が掛かるばかりか、再生しないリスクもあることを考慮する必要があります(問題を知る②:生産地の環境・社会への影響へ)。仮に数十年、数百年後に森林と森林土壌が完全に元に戻ることがあったとしても、それまでの時間はずっと大気中に膨大な炭素を排出した状態がつづくことになります。