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【連続コラム】”バイオマスに投じられる巨額の資金:森林ではなく補助金を削減すべき理由”~④ポーランドの政策動向

本連続コラムは、バイオエネルギーの問題に取り組む国際NGOネットワーク「バイオマス・アクション・ネットワーク」から出されたレポート “Burning Billions for Biomass-The case for cutting subsidies, not forests”(『バイオマスに投じられる巨額の資金:森林ではなく補助金を削減すべき理由』)から抜粋し、和訳・転載したものです。
 バイオマス発電の再エネとしての支援の適切性を考えるにあたって重要な論点や、補助金の削減・廃止に向けた政策変更が見られる燃料消費国の事例を紹介していきます。第4回は、ポーランドの事例を紹介します。

【この記事の内容】

●補助金により市場が歪み、バイオエネルギー部門と加工産業が競合するように

●コスト高のため、再生可能エネルギー・オークション制度では、ほとんど落札なし

●「国家エネルギー・気候計画」の改定案で、補助金の段階的廃止や新規バイオマスエネルギーへの投資抑制が盛り込まれている

9.2 ケーススタディ:ポーランド

執筆者:アウグスティン・ミコス(Environmental Paper Network/Workshop for All Beings)
ポーランドでは、2004年の欧州連合(EU)加盟後、バイオマスの燃焼によるエネルギーに対する補助金が大規模に導入された。当時、「グリーン証書」と呼ばれる制度が導入された。この制度の下では、再生可能な(木質バイオマスを含む)エネルギーを生産する事業者は、発電した電力に対して「属性証明書」(いわゆるグリーン証書)を受け取り、それを市場で販売することで追加的な収入を得ることができる。

グリーン証書はエネルギー供給事業者によって購入され、供給事業者は、総エネルギー販売額に占める自社の割合に対応する数の再生可能エネルギー証書を償却する義務を負っている。2011年から2020年の間に、固体バイオマスによる発電事業者だけで、グリーン証書制度の下で総額210億ズウォティ(PLN)の補助を受けた

補助金と発電所および熱電併給(CHP)設備で燃やされる木材の量との関連を、最も明確に示す証拠は、2015年から2017年の間にポーランドの商業エネルギー部門において木質バイオマス消費量が一時的かつ急激に減少したことである(図2)この減少は、グリーン証書市場の崩壊と、2015年7月から2017年7月の間にポーランド電力取引所における価格が約75%下落したことによって引き起こされた

図2:ポーランドの商業エネルギー部門における木質バイオマス消費量(千立方メートル)の推移  出典:Workshop for All Beings(2025年)

図2:ポーランドの商業エネルギー部門における木質バイオマス消費量(千立方メートル)の推移 出典:Workshop for All Beings(2025年)

2016年以降、グリーン証書制度は、再生可能エネルギー(RE)オークション制度に段階的に置き換えられてきた。この制度は、新規の再生可能エネルギー設備の導入に対して市場原理に基づく支援を提供することを目的とした。

この制度では、再生可能電力の生産者がオークションに参加し、15年間の支援期間においてエネルギーを販売してもよい最低価格を提示して競争する。落札者は、市場価格が入札価格を下回った場合に差額決済契約(Contract for Difference)による保証価格を受け取ることができ、これにより投資の安全性が確保されると同時に、公的支出が抑制される。

この制度が導入されて以降、バイオマス事業はほとんど支援を受けておらず、成功した入札はごく例外的なケースに限られている。これは主に、風力や太陽光発電と比べてコスト競争力を欠いているためである。この制度では、バイオマスについて風力や太陽光発電に設定されている基準価格よりも25~75%も高い基準価格を設定することが認められているにもかかわらず、バイオマス開発事業者は概して入札を控えており、たとえ高い価格上限が設けられていても、オークション制度の枠組みの中では経済的に成立しないことを示唆している。

操業の支援に加えて、ポーランドのバイオマスエネルギー生産者は、例えば暖房プラントや熱電併給プラントにおける固体バイオマスボイラーの設置のための投資支援を受けることもできる。このような支援は、主に国やEUの基金によって共同融資される複数のプログラムを通じて提供されている。

2007年以降、バイオマス発電所、熱供給プラント、熱電併給プラントの建設、あるいは石炭火力発電所のバイオマス転換に関わる少なくとも30件のプロジェクトが、ポーランド向けに配分されたEUの基金から総額1億ユーロ超の支援を受けている。熱源をバイオマスボイラーに置き換えるための補助金は家庭にも支給されている。老朽化した石炭および薪焚きの暖房設備の更新を目的とする「クリーン・エア」プログラムの下で、2018年以降、バイオマスボイラー購入に対する補助金申請は約22万5,000件に達している

木質バイオマスの燃焼への補助金は、ポーランドの商業エネルギー部門におけるその消費量を、わずか20年余りで150倍に増加させた。2004年には3万3,000立方メートルであった消費量は、2023年には500万立方メートルに達している。このエネルギー部門における木材需要の急増は、ポーランドの森林における伐採量増加に寄与しており、新たな森林保護区の創設に対する主要な障壁の一つになりつつある。

この状況に対し、ポーランドの環境団体からは強い反発が起きている。最近発表された「森林マニフェスト」では、300の非政府組織および社会運動が、エネルギー設備における木材燃焼の中止を求めた。

さらに、木材の燃焼量が増加するにつれ、バイオエネルギー部門は加工産業と木質バイオマスを巡って競合するようになっている。特に、非常に低品質な木材であっても材料生産に利用できる木質パネルの製造業者について、その影響が顕著である。産業界の代表者は、補助金制度の存在により、エネルギー企業が木材に対して最大で20%高い価格を支払うことが可能となり、その結果、市場の歪みが生じ、国内産業の競争力が損なわれていると指摘している。

環境団体と木材産業の双方からの反対に直面し、ポーランド政府は現在の連立政権合意において、商業エネルギー生産における木材燃焼を禁止するとの政治的宣言を行った。

しかし、この宣言は(2025年9月時点では)まだ実施されていない。とはいえ、ポーランド当局はエネルギー部門における木材燃焼を減らしていくためのいくつかの措置を講じている。新たに「エネルギー用木材」の定義が策定され、公的支援の対象となる木質バイオマスは、直径5センチメートル以下の極めて小径の木材に限定された

さらに、ポーランド気候・環境省は、国家エネルギー・気候計画(NECP)の改定案を作成し、補助金の段階的廃止や新規バイオマスエネルギーへの投資の抑制を通じて、エネルギー部門における固体バイオマス利用の段階的廃止を盛り込んでいる。しかし、最近の政権内再編により新設された「エネルギー省」が、エネルギー分野の管轄権を引き継いだことから、これらの計画の実施は深刻な脅威にさらされている。新任の担当大臣は、NECP改定案について、バイオマスエネルギーの役割を拡大することを含め、見直す方針を表明している。

ワルシャワのシェキェルキにある熱電併給プラントでは、石炭とバイオマスの混焼が行われており、年間約350トンの固体バイオマスが燃焼されている。  
写真提供:Workshop for All Beings(ポーランド)

ワルシャワのシェキェルキにある熱電併給プラントでは、石炭とバイオマスの混焼が行われており、年間約350トンの固体バイオマスが燃焼されている。
写真提供:Workshop for All Beings(ポーランド)