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【連続コラム】”バイオマスに投じられる巨額の資金:森林ではなく補助金を削減すべき理由”~②「なぜバイオマスエネルギーは補助されるべきではないのか」

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本連続コラムは、バイオエネルギーの問題に取り組む国際NGOネットワーク「バイオマス・アクション・ネットワーク」から出されたレポート “Burning Billions for Biomass-The case for cutting subsidies, not forests”(『バイオマスに投じられる巨額の資金:森林ではなく補助金を削減すべき理由』)から抜粋し、和訳・転載したものです。
 バイオマス発電の再エネとしての支援の適切性を考えるにあたって重要な論点や、補助金の削減・廃止に向けた政策変更が見られる燃料消費国の事例を紹介していきます。第2回は、「第2章 なぜバイオマスエネルギーは補助されるべきではないのか」から抜粋して紹介します。

【この記事の内容】

●バイオマスエネルギーはコストと技術革新の面で失敗している

●風力・太陽光に対する競争力の低下

●バイオマス発電・熱利用における技術革新の余地は限定的

●「ベースロード電源」としてのバイオマス発電という主張の崩壊

●風力と太陽光は人々と地域社会にとってより良い

5.1 バイオマスエネルギーはコストと技術革新の面で失敗している

執筆者:ピーター・リッグス(Pivot Point)
バイオマスエネルギーは、補助金によって再生可能エネルギーとして後押しされてきたが、経済性という観点だけを見ても、他の再生可能エネルギーと比べて成果を上げることができなかった。

大規模なバイオマス発電はこれまで、補助金や(一部の国・地域では)固定価格買取制度がなければ、市場で一定の地位を確立することはできなかった。当初は、風力や太陽光についても同様の状況であった。

15年前には、安定電源として機能し、技術革新とコスト削減が進む可能性があるという理由から、木質バイオマスの燃焼を補助することには一定の合理性があったとも言える。しかし現在では、バイオマスエネルギーは技術革新や単位エネルギー当たりのコスト削減もできず、その結果として、他の再生可能エネルギー技術に大きく競り負けていることが明らかである。

風力・太陽光に対する競争力の低下
以下のグラフ1は、2010年以降、主要な3つの再生可能エネルギー技術(水力以外)がたどってきた、コストと技術革新の大きな違いを示している。

グラフ1:風力、太陽光、バイオマスのコストの推移

グラフ1:風力、太陽光、バイオマスのコストの推移

※LCOE:Levelized Cost Of Electricity(均等化発電原価)

風力発電の単位コストは10年以上にわたって着実に低下してきた。太陽光発電のコスト低下はさらに劇的である。一方、バイオマスにはそのような低下傾向は見られない。以下では、なぜバイオマスへの補助を続けることが無駄遣いの繰り返しに過ぎないのかを示す。

バイオマス発電・熱利用における技術革新の余地は限定的
理論上は、運転方法の改善、サプライチェーンの統合強化、原料のより効率的な利用、発電所の効率向上などによって技術革新が起こり得る。しかし、固体燃料の燃焼技術はすでに成熟した技術であり、効率をさらに大きく改善できる余地はほとんどないことに注意する必要がある。

2018年から現在に至るまで、生産ラインにおける技術革新はほとんど見られない。サプライチェーンの統合によって、保管期間の短縮や、トラック・鉄道・船舶輸送の最適化などにより、木質原料以外に掛かるコストをいくらか削減することは可能である。

しかし、原材料コストは依然として高止まりしており、風力や太陽光と比べた際に競争上恒常的に不利になる要因となっている。バイオマスエネルギーのコストは木材価格に大きく依存するが、風力と太陽光は無料である。木材はまた、需要が供給を上回って増加するたびに、価格急騰のリスクに脆弱である。

また、高密度ペレット(「ブラックペレット」「トレファイド(半炭化)ペレット」「水蒸気爆砕ペレット」「HTCペレット」など)の開発が数多く試みられてきたが、技術的制約、コスト高、安全性の懸念などにより、それらペレットの大規模生産はこれまで実現していない。端的に言えば、これらペレットへの調達のシフトが進んでいるとは言えない。ブラックペレットは、現在世界のバイオマスエネルギー市場を支配している「ホワイトペレット」よりも、コスト競争力が高いようには見えない。

「ベースロード電源」としてのバイオマス発電という主張の崩壊
バイオマス業界の支持者は、風力・太陽光発電の均等化発電原価をバイオマス発電と比較するのは不公平だと主張してきた。なぜなら、バイオマス発電は常に出力調整が可能である一方、風力や太陽光はそうではないからだ。

しかしこの主張は、過去5年間におけるエネルギー貯蔵コストの劇的な低下によって揺らいでいる。この貯蔵の低コスト化の傾向は、今後10年でさらに加速する可能性が高い。

信頼性の高いエネルギー系シンクタンクであるロッキー・マウンテン研究所(Rocky Mountain Institute)が2024年に発表した報告書は、バッテリーのエネルギー密度向上とバッテリーセルのコスト低下により、今後もコスト削減が続くと予測している。バッテリーエネルギー貯蔵の需要の急増は、さまざまな技術革新を促し、貯蔵の単位コストを急速に押し下げている。その結果、バイオマスが「ベースロード電源として重要である」とする主要な論拠の一つが一層揺らいでいる。

5.2 風力と太陽光は人々と地域社会にとってより良い

執筆者:ジョイ・リーブス(レイチェル・カーソン・カウンシル)

風力発電は、最も安価で、かつ雇用創出効果の高い発電方法の一つである。風力プロジェクトは、農村部や沿岸地域に雇用と収入をもたらすことができる。米国では、風力発電産業は全国各地で大量の雇用を生み出していることで高く評価されており、2022年だけで経済に200億ドルを貢献した。米国労働統計局によれば、風力タービンの整備士は今後10年間で最も成長が見込まれる職業であり、太陽光発電設備の施工者がそれに続いている(2024~2034年)。

米国のような国々では、こうした雇用は、すでに豊かな地域に集中しているわけではない。風力エネルギーは、特に風力設備に適した土地を持つ農業地域などの農村部に収入をもたらしている。風車は土地の一部しか使用しないため、農家や牧場主は、太陽光発電における「営農型太陽光(agrivoltaics)」と同様に、農業や牧畜を継続することができる。

これは、木質ペレット工場の近くに住む土地所有者や住民が経験していることとは対照的である。ペレット工場は、地域住民の最大80%が屋外に出ることに懸念を抱くほど、粉じん、騒音、悪臭、交通量の増加、汚染といった影響をもたらしている。

農家や土地所有者は、風力や太陽光発電施設の所有者から地代を受け取り、副収入を得ることもできる。風力プロジェクトは、土地賃貸料や州・地方税として、年間約20億ドルを地域にもたらしている。