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FIT輸入木質バイオマス発電の最新状況(発電所件数・容量、生産国別燃料輸入量)

カナダ・ブリティッシュコロンビア州の木質ペレット工場©Kenji Ito
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の木質ペレット工場©Kenji Ito

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の高い買い取り価格によって輸入バイオマスが急増し、2024年の木質ペレットの輸入量は638万トン、PKSは600万トンになりました。2024年12月末現在、FIT認定を受けて稼働しているバイオマス発電所全体の容量(kW)のうち、「一般木材・農産物残さ」(輸入バイオマス)が約7割を占め、全国で119カ所稼働しています。

バイオマス発電は2012年以降、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)によって「再エネ」の一つとして支援されてきました。しかし、バイオマス発電は他の再エネと異なり、燃料を必要とする火力発電です。

FIT制度で認定されるバイオマス発電の燃料には、「一般木質・農産物残さ」「一般廃棄物・木質以外」「未利用木質」「建設廃材」「メタン発酵ガス」などのカテゴリーがありますが、「一般木材・農産物残さ」は輸入木質ペレット(木材を砕いて圧縮したもの)やパーム椰子殻(PKS。アブラヤシの種から油を搾り取った後の殻)などの輸入バイオマス、「未利用木質」は国産の間伐材・林地残材などに相当します。

FITバイオマス発電の7割が輸入燃料

木質バイオマス発電の場合、発電コストの7割が燃料費で、木質バイオマスを発電のみに利用した場合のエネルギー効率は低く約20~30%とされています。このように原理的に高コストで非効率なものがFITの高い買い取り価格によって支援されることで事業として成り立ち、大型かつ輸入燃料に依存する発電所が全国で次々に建設され、運転を開始しています。

2024年12月末現在、認定を受けて稼働しているバイオマス発電所全体の容量(kW)のうち、「一般木材・農産物残さ」(輸入バイオマス)が約7割を占め、全国で119カ所稼働しています。「未利用木質」は発電所数は多いのですが、1基当たりの容量が小さいため、全体の1割程度となっています。


※導入容量/件数とは、運転を開始し、FITによる買取が開始された発電設備の容量/件数のこと
※「新規認定分」とは、FIT制度開始後に新たに認定を受けた発電設備のこと
※「移行認定分」とは、既に発電を開始していた設備がFIT制度開始後にFIT認定を受けたもの

FITの支援で燃料の輸入が急増 木質ペレット88倍、PKS 230倍~膨大な燃料費が海外に

木質ペレットの輸入量はFIT制度が始まった2012年(約7.2万トン)から24年(約638万トン)までの間に、約88倍に増加しました。現在、木質ペレットの輸入元第1位ベトナム、第2位カナダ、第3位がアメリカです。(各燃料生産地についての概要は問題を知る②:生産地の環境・社会への悪影響へ

インドネシアからの木質ペレットの輸入も、近年急増しています。2021年には、3.8万トン(日本の木質ペレット総輸入量の1%)でしたが、2024年には31.5万トン(総輸入量の5%)に増加しました(林野庁「過去の木材輸入実績」より)。日本向けのペレット生産地で膨大な面積の熱帯林の伐採が確認されており、今後、生態系や地域社会への悪影響の拡大が懸念されます。(インドネシアからの木質ペレットの輸入と熱帯林破壊のつながりについてはこちらから)

PKSの輸入量は、2012年(2.6万トン)から2024年(600万トン)に、約230倍に増加しています。

PKSおよび木質ペレット輸入量の推移【バイオマス白書2025より)
バイオマス白書2025より「PKSおよび木質ペレット輸入量の推移」
https://www.npobin.net/hakusho/2025/topix_02.html

2024年の輸入燃料費(木質ペレット、PKS)は、

  • 木質ペレット 1932億円(林野庁「2024年木材輸入実績」より)
  • PKS 1416億円(株式会社FTカーボン「輸入バイオマス燃料の状況」から概算)

となっています。あわせて3000億円以上の燃料費(林野庁の当初予算に匹敵)が、国内の林業・地域振興に回ることなく、海外に流出していることになります。

まとめ

  • 木質バイオマス発電は原理的に高コストで非効率(発電コストの7割が燃料費で、発電効率は約20~30%)
  • FIT認定を受けて稼働するバイオマス発電所の総容量(kW)の内、約7割が輸入バイオマス
  • FIT制度開始後(2012年~2024年)、バイオマス燃料の輸入が急増(木質ペレットは88倍、PKSは230倍に増加)
  • 2024年の輸入燃料費(木質ペレット、PKS)は3000億円余りで、林野庁の当初予算に匹敵する。

執筆者プロフィール

鈴嶋克太(地球・人間環境フォーラム) 
2021年から地球・人間環境フォーラム。バイオマス発電の問題について、海外NGOとのリレーション構築、金融機関やメディアへの情報提供を担当。 
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